『FSC認証』で出来ること。その意味と必要性
国連サミットで採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』に2030年までに達成すべき国際目標として記載された『SDGs』。
近年は国レベルだけでなく、現在は企業や個人でも取り組みが進むほど浸透し、環境に配慮することが当たり前になりつつあると感じられている方も少なくないのではないでしょうか。
中でも、世界各地で最も取り組まれている活動の一つが自然保護。ところがそれでも無計画あるいは違法に行われる森林伐採はなくなっていません。日本では一人当たり年間にティッシュ1000箱以上の紙を使用すると言われています。使用される原料の木の多くは海外からの輸入品ですが、地球の自然や他国の人々の暮らしに影響している可能性もあり、私たちも無関係とは言えないでしょう。
ペーパーレスが叫ばれる昨今ですが、紙の使用をゼロにすることは困難です。一方で森林がなければ私たちが生きるための空気や水が作られなくなってしまいます。となれば森を守りつつ、その恩恵を享受していく方法を考えなければいけませんが、そんな良いところ取りが成立するのでしょうか?
『FSC認証』を用いれば、実現可能です。
『FSC認証』とは?
『FSC認証』は、持続可能で適切な管理がされた森林の木材からつくられた製品であることを示す認証(マーク)。森の動植物やそこで暮らす人たちに配慮し、将来的にも豊かな森が持続できるよう管理しているかを国際的な基準によって認められた製品につけることができます。
認証を行っているのは『FSC』(Forest Stewardship Council / 森林管理協議会)です。1994年にカナダで設立されて以降、現在では世界120か国以上に存在しています。
『FSC認証』の仕組み
FSC製品として販売を行うためには、生産・加工・流通の過程に関わるすべての組織が認証を受けなければなりません。例えば、FSCの基準を満たす森林から生産された木材でも、流通の段階で基準を満たしていない森林の木材と混在してしまうと、FSC認証製品ではなくなってしまうのです。
そのため、FSC認証のスキームにはFM(Forest Management、森林管理)認証とCoC(Chain of Custody、加工・流通過程)認証の2種類があります。
FSC認証のFM(Forest Management、森林管理)認証とは
FM認証では『FSCの原則と基準(第5−2版)』のFSC森林管理の10原則を満たすことが求められています。
原則1:法律の順守
原則2:労働者と労働環境
原則3:先住民族の権利
原則4:地域社会との関係
原則5:森林のもたらす便益
原則6:環境価値とその価値への影響
原則7:管理計画
原則8:モニタリングと評価
原則9:高い保護価値(HCV)
原則10:管理活動の実施
原則1および5~10はFSCの主たる目的『森林の環境管理』にあたります。加えて、原則2~4では労働者や地域の住民の人権問題を認証基準に含んでいます。
FSC認証のCoC(Chain of Custody、加工・流通過程)認証とは
一方のCoC認証は、木材の加工・流通過程でFM認証以外のものが混入するのを防ぐ仕組みで、伐採業者、加工業者、製造業者、流通業者、印刷業者が対象です。FM認証を取得し、CoC認証による管理へとバトンがパスされ、初めて最終製品にFSC認証が受けられます。
なお、CoC認証で要求されるのは、以下の事項です。
1:CoC管理システム
2:原材料調達
3:原材料の取り扱い
4:FSC原材料および製品の記録
5:販売
6:木材合法性に関する法令の順守
『FSC認証』の必要性
『FSC認証』は認証スキームにおいて、厳しい基準を設けています。この基準を守ることで持続可能で豊かな森林が保護され、動物たちの命が失われることや気候変動を食い止める役割を担ってくれるのです。
また、認証基準の中では人権への配慮として、強制労働や児童労働などの人権侵害が起こっていないか、先住民の権利侵害や差別が行われていないかをも確認していますので、あらゆる面からSDGsの17の目標に寄与できます。
『FSC認証』への関わり
『FSC認証』は一見すると木材生産・流通に関わる企業だけが意識するものに思えてしまうかも知れません。しかし、直接携わっていない企業や一般消費者も『FSC認証製品を選択する』という活動により、その取り組みの支援が可能です。
JALや日本マクドナルド、スターバックスでは使用する紙のほとんどを『FSC認証』に切り替えていますし、楽天もサスティナブルな買い物をテーマとした『EARTH MALL with Rakuten』を立ち上げています。
これから飲食店でテイクアウトする際や小売店で買い物をする際、FSC認証マークを探してみるだけでも、新たな気づきや発見があるかも知れません。
興味のある・出来る範囲から、少しづつ関わってみてはいかがでしょうか?
参考文献:
日経ESG 2018年11月号 待ったなし「持続可能な調達」
日経トレンディ 2021年6月号 特集3 地方発・地方を盛り上げる次の一手
FCSジャパン 普及啓発用の各種リーフレット
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