「洋紙」と「和紙」の違いとは?
紙と一言で言っても、その種類や用途は非常に多岐に渡ります。
私たちの生活でよく見かける印刷用紙のほとんどは『洋紙』ですが、日本には『和紙』という独特の紙文化があり、これは洋紙と大きく異なる製造工程や特性を持っています。
今回は『洋紙と和紙の違い』について詳しく解説し、それぞれの魅力や用途についてご紹介します。
洋紙と和紙
『洋紙』は、西洋で発展してきた用紙。印刷需要の高まりに合わせて、安定的かつ高品質な紙が生産出来るよう、改良が進められるようになりました。
一方の『和紙』ですが、中国で生まれて日本で発展を果たして来たものになります。
筆と墨と相性の良い紙が求められたことを背景に、より美しく書き味の優れた和紙の開発が進んでいくのです。このように、発展した背景にも違いがあります。
洋紙と和紙の原材料や製造方法の違い
原材料も洋紙と和紙の違うポイントのひとつ。
洋紙は主に木材パルプを使って作られています。
それを成形して機械で紙を抄いて紙を作る工程を進みますので、繊維が短く、均一でスムーズな表面に仕上がります。
機械を用いることにより、量産の容易さと安価という特長です。
和紙の原材料は、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)など、日本特有の植物を使います。
荒めで不均一な仕上がりの表面になる一方で、繊維が長く強靭な紙になります。
手漉きでの製造になるため、少量生産にならざるを得ず、製造コストは高価です。
洋紙と和紙の質感・耐久性の違い
続いて、質感や耐久性の違いについてもご説明しましょう。
まずは質感についてですが、さきほどお伝えした通り、『洋紙』の繊維が短く、スムーズで表面が均一になっていますので、特に印刷適性に優れます。
『和紙』は洋紙とは異なる不均一な表面ですが、柔らかく、繊維が見える独特の風合いを持ちます。厚みがありながら軽く、手触りが温かみを感じさせます。
耐久性に関しては『洋紙』は湿気や経年劣化に弱い点と、保存環境によっては腐りやすい傾向があることに留意しなければなりません。
『和紙』は植物繊維の強さにより、耐久性や保存性が高いです。雹皮を使用した和紙は特に虫やカビに強く、中には数百年以上の保存が可能なものも。
洋紙と和紙の用途の違いとは?
特長や性質の異なる『洋紙』と『和紙』ですから、それぞれ異なるシーン・用途で活躍しています。
洋紙の用途と種類
主に印刷物やコピー用紙、書籍、包装紙など大量に生産されたり、大量に消費することが求められる場面で使用されるものです。
『洋紙』は大きく分けて印刷用紙や新聞巻取紙などの『紙』と、ダンボール原紙や紙器用板紙から成る『板紙』に分類出来ます。各々の違いをまとめてみましょう。
紙:新聞巻取紙
その名の通り、新聞紙に活用されますが、高速の大量印刷に耐え得るほどの耐久性を持ち、頑丈でありながらインクが染み込みやすいよう、吸水性が非常に高い特長があります。
印刷するものや記すものによって用途も分かれてきます。
紙:印刷洋紙・情報用紙
印刷用紙は、上質紙・コート紙・アート紙・グラビア用紙など、写真やイラストの色を美しく再現して印刷することに長けている用紙です。
情報用紙は、ノーカーボン紙・コピー用紙・感熱紙などを指し、直接手書きで文字を書いたり、文字を印刷することを主な目的として使われます。
紙:包装用紙
包装用紙も『洋紙』の一種です。商品の包む紙を思い浮かべる方が多いかも知れませんが、封筒・手提げ袋などもここに分類されます。
さらに木に近い色をしているクラフト紙は未晒紙包装紙、白色の晒包装紙と言った違いがあります。
紙:衛生用紙
生活必需品はこの衛生用紙に該当します。ティッシュペーパー、トイレットペーパー、タオル用紙などが含まれます。
紙:雑種紙
雑種紙と呼ばれる工業用や家庭用の紙についても『洋紙』にカテゴライズされるものも。例えば建築用の厚紙や電気絶縁紙が雑種紙に分類されます。
やや紛らわしいのですが、書道用の半紙・障子紙なども量販店や百円ショップで取り扱われるものは機械で作られた洋紙となります。
ここからは板紙の種類についてを取り上げて行きましょう。
板紙:ダンボール原紙
まずはダンボール原紙(ライナー、中しん原紙)。生活に身近なこの紙も『洋紙』です。
板紙:紙器用板紙
紙器に用いられる板紙(白板紙、黄板紙、チップボール、色板紙)も『洋紙』になります。
板紙:雑板紙
防水原紙や石膏ボード紙、紙管原紙と言った雑板紙と呼ばれるものも『洋紙』に分類されます。
和紙の用途と種類
書道、版画、掛け軸、障子紙、伝統工芸品などの分野で利用されるほか、インテリアや高級文具などでも用いられるケースも。
アートやデザイン的なジャンルでもモチーフとして注目されていると言えるのではないでしょうか。
そんな『和紙』は原料別にご紹介したいと思います。
和紙:楮紙(こうぞがみ)
楮(こうぞ)は、最も古い和紙の原料とされる植物で、現在も多くの和紙が楮を主原料としています。繊維が長く、強度も高いので、丈夫な紙に仕上がります。
適度な柔軟性もあり、加工もしやすいので、重宝されます。
和紙:三椏紙(みつまたがみ)
三椏(みつまた)は『和紙』の中で軽量かつ光沢を持つ和紙に仕上がる和紙原料です。
三椏の繊維は楮に比べるとやや短く、紙はしなやかでしっとりとした質感を持っていまして、この質感が光沢を生み出します。
耐水性もあり、湿気に強いため、洋紙とは異なる上品な風合いが人気。
和紙:雁皮紙(がんぴし)
雁皮(がんぴ)は、日本の山地に自生する植物ですが、希少性が高いものです。
そのため、これを原料として『和紙』は高級和紙とされ、細かい繊維と上品な光沢、保存性にも優れていますので、珍重されます。
「洋紙」と「和紙」の違いとは? まとめ
『洋紙』『和紙』ともに馴染みのある紙でありながらも、その違いを意識することは少ないかも知れません。
『洋紙』は汎用性が高く、大量生産を可能にする形で発展を進め、より私たちの日常生活に欠かせないものになっています。
一方で『和紙』については、使用する植物や製法によって多種多様な種類が存在し、特長に応じて活用され、それぞれ独自の歴史と風合いが息づいています。
どちらも違った魅力を持ち、活躍の出来る場面はそれぞれ異なります。『違い』が分かっていると、触れる際にも意識も変わります。
また、今後印刷物の発注やデザインを行う機会があれば、今回の記事をぜひご参考になさってみてください!